
湘南の海辺を走る朝、波の音に耳を傾けながら思う。「これで十分」。そんな心をくれたのが、ヨガ哲学の「サントーシャ」だ。サンスクリット語で「満足」や「足るを知る」を意味するこの考えは、公務員として安定を手にしながら「ないものねだり」で、いつもどこか「諦め」を感じていた私を救い、ランニングクラブの起業へと導いた。スポーツグラフィックナンバー風の軽快な語り口で、サントーシャをランニングに取り入れるコツを綴る。肩の力を抜いて、読んでみてほしい。
サントーシャとは? ランニングに活かす「足るを知る」
サントーシャは、ヨガの八支則「ニヤマ」(自己鍛錬)の一つで、「今あるものに満足する」マインドだ。『ヨーガ・スートラ』によれば、過去や未来に囚われず、今この瞬間に感謝する生き方。ランニングでは、タイムや他人との比較を捨て、走る喜びを味わうこと。起業では、「もっと成功を」と焦る心を抑え、今の一歩に満足する姿勢だ。
公務員時代、私は安定に感謝しつつ、物足りなさを感じていた。SNSでキラキラしたランナーを見ては、「自分ももっとタイムを出したい」とモヤモヤ。サントーシャを知り、時計もつけずタイムも気にせず「自分の感覚ペースで十分」と走ったら、心が軽くなった。この哲学が、クラブを始める勇気をくれた。走る人も、夢を追う人も、サントーシャで自由になれる。
ないものねだりの闇:公務員時代のメンタルどん底
私は24年間市役所で働く公務員だった。給料は安定、週末は湘南の海沿いでランニング。それでも、なにか物足りなさを感じSNSを開くたびに落ち込んだ。サブ2.5のポスト、トレイルランの絶景、最新シューズのレビュー。「自分の住む世界はなんて狭いんだ・・・」。
ランでも他者のタイムをチェックし、思い通りのタイムで走れないと落ち込み。夜はスマホをスクロールして眠れず、職場でミス連発。妻に「いつも楽しくなさそう」と言われ、家庭もギクシャク。メンタル、どん底。
最悪だったのは、毎年楽しみにしていた「北海道マラソン」中止。目標のフルマラソンがなくなり、ランニングは義務感に。楽しさゼロ。
そんな時、ヨガをやっている知人から送られてきたネット記事でサントーシャに出会った。「足るを知る。今に感謝」。
すぐさま図書館でヨガ哲学に関する本を借り熟読。試しに朝ランでタイムを気にせず、海のキラキラや波の音に集中。心がスッと軽くなり、コロナの外出自粛要請も「休むチャンス」と受け入れて前向きになれた。
サントーシャが、どん底から引き上げ、その後の起業のきっかけをくれた。
ランニングクラブの誕生:サントーシャで踏み出した一歩
公務員を辞め、ランニングクラブを始めるなんて、昔の私なら「無理!」と笑いもの。でも、サントーシャで「今の自分に満足」を学んだら、怖いものがなくなった。2021年、平塚でクラブを立ち上げた。最初は、地域で競技を続ける人間が実業団選手とも戦えるための「ハコ」としてクラブを始めたが、ゆくゆくはサントーシャを軸に「タイムより満足」を、「競走」も「共走」もたのしめるをモットーにしたいと考えていた。
起業は大変だった。SNSで他のクラブの派手なイベントを見ると、「うちもああしないと」と焦った。
でも、「今、1人でも一緒に走ってくれ人がいる。それでいい」。様々なランニングコミュニティに足を運び、一緒に走って時には質問や悩みに答え、ランナーとのつながりを増やしてきた。サントーシャが、夢を現実に変えた。
サントーシャをランニングで実践する4つのコツ
どうやってサントーシャをランニングに活かす? 私の体験をライトにまとめてみたい。
1. 心の準備:走る前に「満足」をセット
サントーシャはマインドが鍵。走る前に、「今日の自分に感謝」とつぶやく。練習前に「走れる体、最高!」と呟く。それだけでもスッキリする。
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感謝リスト: ラン後に「足りてるもの」を考える。「風が気持ちよかった」「5km走れた」。他者との比較はない、SNSのモヤモヤを吹き飛ばす。
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マインドフルラン: 呼吸や足の感触にフォーカス。他人のタイムや背中が浮かんだら、「今、走れてる!」とリセット。ストレス軽減効果は科学でも実証済み。
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目標をゆるく: 「タイム」より「完走できたらハッピー」。クラブでは「自分のゴール」を大切に。
2. 走り方の工夫:満足を第一に
ランニングプランにサントーシャを。速さより、楽しさを。
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フレキシブルに: 天気や体調で変更。雨なら屋根のあるちょっとした直線でジョグ。「これでOK」。怪我経験から、ムリは禁物。
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ゆっくりラン: ビーチランは、朝陽や夕陽を見ながら。インターバルより満足度高い。
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仲間とのラン: 速い人に合わせず、「一緒に走る楽しさ」に満足。リアルな笑顔を大切に。
3. 日常に広げる:サントーシャをライフスタイルに
サントーシャは生活全体で効く。起業後のメンタルも安定。
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SNSはほどほど: クラブのInstagramはみんなの練習後の笑顔をポスト。自分はSNSを1日30分以内に。
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休養も喜び: 疲労や怪我は「ケアの時間」。クラブでも休息を推奨。
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食事に感謝: プロテインやサプリメントではなく自然な食事を「体が喜ぶ」と味わう。栄養と心の話もクラブで。
4. レースや夢でのサントーシャ:プレッシャーを楽しむ
大会や起業で、サントーシャが輝く。
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スタートの誓い: クラブで「今日を楽しむ!」と宣言。初フルマラソン、平凡なタイムでも満足。
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途中の切り替え: バテても「今のペースで十分」。起業初期、参加者少なくても「5人で楽しい」。
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ゴール後の振り返り: 「走れたこと」に感謝。クラブとして東日本実業団駅伝に初挑戦した年は、笑顔で心満たされた。
トレーニングでのサントーシャ
自らのトレーニングプランを例に。
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週1: ビーチラン(10km): タイム無視で海を満喫。「走れただけでハッピー」。
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週2: イージーラン(5km): 波の音を聞きながら、マインドフルに。
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月1: ファンランイベント: 夜の横浜をゆっくり巡る大人のためのサードプレイスを作る。
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休養日: 読書とコーヒーで心と体をリセット。
参加者の笑顔が増え、クラブは少しずつでも成長。私も、起業の喜びを実感。
つまずきポイントと抜け出し方
サントーシャの落とし穴。
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満足=サボりじゃない: 努力も続ける。クラブでは小さな目標を応援。
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周りの声: 退職後も「安定が一番」と散々言われたけど、自分の満足を優先。
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対処法: 月1の振り返り会で軌道修正。
サントーシャで、走って、夢を
公務員からランニングクラブ起業。サントーシャがなかったら、この一歩はなかった。湘南の海沿いを走るたび、「これで十分」と心が軽くなる。
ないものねだりやSNSを手放し、今に満足を。
あなたのランニングが、人生の新ステップになるはず。