駒澤大学 鈴木芽吹 復活

レース

出雲駅伝2022は駒澤大学の圧勝で終わった。

私が個人的に考える優勝の立役者は、1区の花尾恭輔(3年)

ここに尽きる。

中央の吉居が快調に先行する中、2位集団で冷静にレースを運び中継所では区間賞の吉居と9秒差の区間2位で、2区のスーパールーキー佐藤圭汰へタスキを渡す。この秒差は、デビュー戦のルーキーしかも日本でもトップクラスのスピードランナーにとってはもってこいの展開だ。

入りの1キロでトップに追いつくとそのまま自分のリズムで快走。トップでエースの田澤廉にタスキを渡し「勝負あり」

レースの寸評についてはまだまだ書きたいところはあるが、そこは

陸上競技マガジン」さんや「スポーツグラフィック Number」さんにお任せしたい。

ここでは今年の箱根駅伝からずっと私が気になっていた選手に触れたい。

優勝テープを切ったアンカーの 鈴木 芽吹(3年)

鈴木は高校駅伝の名門 佐久長聖から駒澤へ入学。1年次から早速頭角を現し10000mU20日本歴代5位の28分23秒87を記録するなど、順調に大学での競技生活をスタートさせた。2年次には日本選手権の参加標準記録を突破し日本選手権に出場。エースの田澤とともに総合3位に入り、日本人学生歴代3位となる27分41秒68のとてつもない記録を叩き出した。

しかし、9月に大腿骨を疲労骨折し出雲駅伝、全日本大学駅伝を欠場。今年1月の第98回箱根駅伝では、当日変更で8区を走ったが。12km過ぎあたりからペースがガクンと落ち並走していた順大に差を広げられると、戸塚中継所付近では中央大、東京国際大、創価大にも抜かれ順位を4つ落としたが、どうにか走り切り襷を繋いだ(区間18位)。

この時、鈴木は9月に骨折した右足とは逆の左足の大腿骨を疲労骨折しており、ゴール後は自力歩行できないほどだったと言う。途中棄権していてもおかしくないほどの大きな故障だった。

恐らくは骨折してから10キロ以上を無理して走っていたことになる。

私は鈴木の8区が終わってからずっと気になっていた。彼の競技人生についてだ。

その後の報道を見るとその不安は更に大きくなった。

ゴール後は自力歩行ができず仲間に抱えられ中継所を後にした・・・

その後も寮での日常生活も援助が必要なほどだった・・・

春のシーズンになっても彼の名前を見ることはなく、夏の合宿の様子もわからない。

そんな中でようやく彼の近況を掴めたのは9/7のことだ

佐久長聖出身者特有のダイナミックなストライドとフォームは彼の持ちタイムを納得させうるに足りる。

しかし、大腿骨という人間の骨の中でも最も太い骨を両足とも疲労骨折する経験を持つというのはその代償とも言える。

厚底カーボンシューズの普及でアキレス腱や脛部の故障が激減した代わりに大腿骨、臀部、股関節の故障が増えたとも聞く。

合宿を順調にこなしていると言う情報にホッとする一方で再発の心配とレースに出られる状況なのか?という不安は拭えなかった。

復帰したとしてもストライドやリズムは戻っているのか?何より恐怖感は拭えるのか?

10/10当日変更のメンバー表に彼の名前はあった。アンカーだ。

駒澤の区間配置を見る限り確実に優勝争いには絡んでくるだろうということは容易に想像できた。と同時に不安要素をあげるとしたら、“鈴木芽吹”という思いは拭えない不安から来るものだったのだろう。

駒澤は順調に首位でタスキをつなぎ鈴木に渡る時には、安全圏とも言える44秒の差を2位につけていた。

鈴木が走り出す。

リズムは良い、ダイナミックなフォームも健在だ。強い横風をもろともせずに快調に歩を進める。

突っ込む訳でもなく、しっかりとペースを刻んでいる印象だ。

出雲大社へと登る登り坂に入っても、箱根駅伝8区遊行寺の登りで見せた苦悶の表情と痛々しい足取りではない。

ラスト1kmを切って更にリズムは良くなったように感じた。不安や重圧との駆け引きの中で、ここまできたら大丈夫と自信が不安に打ち勝った瞬間だったのかもしれない。

鈴木は人差し指を立てゴールテープを切り、仲間の輪に勢いよく飛び込んだ。

復活=活き復る

その瞬間だったのかもしれない。

陸上・駅伝 - 駒澤大・鈴木芽吹 けがから復活の出雲路 支えられた感謝とうれしさに流した涙 | 4years. #学生スポーツ
10月10日に開催された第34回出雲駅伝で、駒澤大学が2013年の第25回大会以来、9大会ぶり4度目の優勝を果たした。アンカーとしてゴールテープを切った鈴木芽吹(3年、佐久長聖)はゴールに向かう最後の直線に入ると腕を突き上げ、高々と「1」を...

出雲神は鈴木に微笑んだ

次は伊勢神、そして箱根の神が彼をどう見守るか。

私自身もしっかりと見守りたい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました