箱根予選会の涙から全日本へ:東海大学の再起と復活

1. 箱根の傷跡:2024年の無念

2024年10月19日、立川の昭和記念公園。第101回箱根駅伝予選会は、季節外れの暑さに包まれていた。東海大学の選手たちは、10人の合計タイムで本戦への切符を懸けて走った。だが、ゴール後の結果は14位。トップ10に届かず、箱根路への夢は閉ざされた。

特に、3年生のロホマン・シュモンがゴール10m手前で倒れ棄権した瞬間は、見る者すべてに衝撃を与えた。

私もかつて箱根路を駆け、タスキを握った一人だ。同学年で切磋琢磨してきた花岡寿哉は、ゴール後に「最後まで力を振り絞ってくれた」とロホマンを称えたが、自身も「秋から調子を戻せなかった」と唇を噛んだ。

あの「黄金世代」から5年…東海大まさかの落選 「留学生級」スーパーエース抜きの東農大は1秒差で涙…箱根駅伝“大波乱の予選会”はなぜ起きた?

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11位の日本大学との差はわずかだったが、「初優勝からわずか5年」名門のプライドを背負う選手たちの痛みは深かったはずだ。

だが、この悔しさから7ヶ月。

2025年5月24日、レモンガススタジアム平塚での全日本大学駅伝関東予選会。東海は5位で本戦への切符を掴んだ。合計タイム3時間52分1秒05。

箱根の涙から7カ月。その裏には、選手たちの静かな葛藤と燃えるような復活への意志があったに違いない。

2. 箱根後の葛藤

箱根予選会の後、選手たちの胸には重い感情が渦巻いたことと思う。

4年生は最後の箱根を逃した自責に苛まれたはずだ「チームを牽引できなかった」と。

そして3年生以下は、4年生に箱根駅伝を走らせてあげることができなかった、自分たちがなぜ箱根の舞台にいないのか?

そんな思いに駆られたことと思う。予選会を走った者は走りを振り返り、「あの1秒が足りなかった」と何度も考えたのではないか?サポートに回った学生は自分たちの無力感にさいなまれたのではないか?

「自分が走っていれば、何か変わったかもしれない」と。

3年生は「最後のチャンスをこのままじゃ終われない」最後の学年で結果を出すことを心に誓ったと思うが、自信を取り戻すのは簡単ではなかったはずだ。

とにかく走ることで、どこで失敗したのか、どこで力を発揮できたのか、どうしたらチームが再起するのか。選手たちは、箱根の傷を胸に抱えながら、前に進む理由を探したことと思う。

私も、チームが途中棄権で終わった「最初で最後の箱根駅伝」で味わった悔しさを思い出す。ゴール後に感じた「主将としてもっとチーム作りでできたことがあったはず」という痛みは、主将経験者なら誰もが知るものだ。

東海の選手たちは、それよりも深い苦悩や葛藤を抱えながら、新シーズンという新たな舞台に目を向けた。箱根の傷は癒えないかもしれない。だが、その傷を力に変えることが、駅伝の真髄だ。

そして、全日本大学駅伝の予選会を迎えた。

3. 復活への一歩:全日本大学駅伝の舞台

2025年5月24日、レモンガススタジアム平塚。20チームがひしめく全日本大学駅伝関東予選会で、東海大学は5位通過を果たした。8人の合計タイムは3:52:01.05。3組目で永本脩が28:44.15、4組目で兵藤ジュダが28:33.55と、後半の組に控える選手がしっかりとチームを牽引する走りを見せた。

エースの花岡寿哉も1組目に回らざるを得ない状態の中でで29:03.85をマークし役割を果たした。

少し苦しんだと言える檜垣蒼も2組目で29:30.91とまとめ、ゴール後の笑顔には、箱根の悔しさを乗り越えた自信が垣間見えた。

結果公式サイト↓↓

https://daigaku-ekiden.com/yosenkai

ゴール後、兵藤は仲間と抱き合った。「箱根の悔しさを、少しだけ返せた」。その言葉に、7カ月間の心の闘いが凝縮されていた。ファンの声援に応え、選手たちはスタンドに手を振った。東海の選手たちが、結果だけではなく、また一歩精神的にも前に進んだ、そんな瞬間だった。

4. 中央大学との94秒:越えるべき壁

中央大学の1位通過は、圧倒的な総合力の証明だった。合計タイム3:50:27.09で、東海との94秒差。8人のタイムは28分台後半~29分台前半で揃い、溜池一太(28:04.39)や吉居駿恭(28:34.81)が圧倒的な走りで牽引した。

東海の課題は、安定した選手層の薄さだ。花岡や兵藤は他大学のエースに匹敵するが、走るべき選手が故障等により安定してレースに出場できていないように感じる。中央との差は94秒は距離にして600m程度だが、駅伝となるとさらに力の差はハッキリとしてくる。中央以外にも予選会時点で上位に3校いて、本線のシード校と戦うとなるとさらに安定感が求められる。

だが、箱根の悔しさを経験した彼らなら、この課題も越えられると信じたい。

5. 本戦への展望:新たな夢の第一歩

全日本大学駅伝の本戦は、2025年11月2日に名古屋から伊勢の106.8kmで開催される。東海大学にとって、この舞台は箱根への再起を証明する場だ。花岡や兵藤のスピード、永本の安定感。檜垣の成長、チームの団結力。これらが揃えば、他大学との差は縮まる。

花岡に起きた不測の事態を、代役鈴木天智らでカバーしたとおり駅伝はチームスポーツだ。

タスキを渡す瞬間、仲間を信じる力。東海の選手たちには、その力が宿っている。全日本本戦で、彼らがどんなドラマを見せるのか。中央大学に挑む姿は、ファンの心を掴むだろう。

6. 駅伝スピリッツと未来へのエール

駅伝は、ただ走る競技ではない。仲間との絆、限界への挑戦、挫折からの復活。それが、駅伝の魂だ。東海大学は、箱根予選の14位という苦い経験を乗り越え、まずは伊勢路への切符を掴んだ。

次は箱根だ。選手たちの葛藤と成長は、去年味わった悔しさや、見えない壁を越える希望に満ちている。

後輩たちへ。君たちの走りは、ファンの心を動かす。箱根の悔しさを、ぜひ全日本、箱根駅伝本戦で晴らしてほしい。いちOBとして駅伝ファンとして、後輩たちが見せる「湘南の暴れん坊魂」を信じている。

ゴールラインで、仲間と笑い合える日を、楽しみにしている。

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