スマートウォッチには映らない、僕が朝ランで見つけた「本当」のこと。

まだ街が、布団の中で半分眠っているような時間。 カーテンの隙間から差し込む光が、部屋の隅のほこりをキラキラと躍らせているのを見つけると、なんだか「秘密の合図」を送られたような気持ちになる。

僕は、そっとベッドを抜け出す。

玄関で、少しだけくたびれたランニングシューズに足を滑り込ませる。シュッ、シュッ。紐を結ぶ音だけが、静かな玄関に響く。

この瞬間、僕は「世界で一番最初の一歩」を踏み出す準備をしている冒険家のような、あるいはただの寝ぼけたマンボウのような、妙な高揚感に包まれるのである。

ヒョイ、と外へ出る。

朝の空気は、ソーダ水みたいにピリッとしていて、吸い込むたびに肺の中が洗われていくのがわかる。ハッハッ、フーフー。

擬音を撒き散らしながら走り出すと、体中の細胞たちが「おや、もう起きる時間ですか」と慌てて会議を始めるのが聞こえてきそうだ。

身体が目覚める、その仕組み

朝に走ることは、ただの「早起き自慢」じゃないんだよね。

実は、これこそが健康的な生活を支える最強の味方なんだ。

なぜかって? それは朝の運動が、眠っていた「代謝」という名のエンジンをドカンと活性化させてくれるから。朝起きたばかりの身体は、エネルギー源である糖質が少なくなっている。

だからこそ、身体は「しょうがない、脂肪を燃やすか!」と、効率よく脂肪をエネルギーに変えようとしてくれる。夜走るよりもずっと、ダイエットには最適なタイミングなんだ。

おまけに、走り終わった後の5〜6時間は代謝が高いまま。通勤で歩くだけでもエネルギーが効率よく使われるなんて、なんだか「ボーナスタイム」がずっと続いているみたいで、得した気分になるよね。

僕の仲間のAさんも、夜ランを朝ランに変えただけで、3ヶ月で5キロも体重が落ちた。お酒が大好きな人なんだけど、「明日も走るから」と深酒を控えるようになった。

結果、睡眠の質も上がって、健康診断の結果まで良くなっちゃった。表情まで明るくなった彼を見ていると、朝の光には不思議な力があるんだな、としみじみ思うんだ。

心を洗う、脳の魔法

もう一つのご褒美は、ストレスがどこかへ消えていくこと。

「自意識」という名の、厄介で重たいリュックを背負って僕たちは生きている。

インスタグラムを開けば、キラキラした朝食や「#朝活」のタグをつけた完璧な自撮りが溢れている。そんなトレンドの波に乗り遅れないように、あるいは他人から「意識高い系」というラベルを貼ってもらうために、僕たちは必死にフォームを整え、スマートウォッチの数値を気にする。

「今の僕、誰かに見られたらどう思われるだろう?」なんて、誰もいない暗がりで脳内のタイムラインを更新してしまう。この、格好悪さを隠そうとする心の動き。

だけど。 朝日を浴びて走っていると、脳内では「セロトニン」や「エンドルフィン」といった、幸福感をもたらすホルモンがドバドバと分泌され始める。

すると、あんなに気にしていた「他人の目」なんて、どうでもよくなってくるんだ。

実は僕も、仕事が忙しくて朝ランを1年ほど休んでいた時期があった。そのときは、いつも頭が重くて煮詰まっていた。でも週に2日だけ朝ランを再開してみたら、日中の集中力が全然違うことに気づいたんだ。「なんだ、あんなに悩んでいたことは大した問題じゃないじゃないか」って。

新しいアイディアがポコポコと生まれてくる感覚。こればかりは、夜の居酒屋では手に入らないものなんだよね。

走り終えて、家の前まで帰ってくる。 空はもう、すっかり透き通った青に変わっている。どこかの家から、トーストの焼ける匂いや、お味噌汁の香りが漂ってくる。

ああ、世界がまた、一斉に動き出そうとしている。

僕は少しだけ肩をすぼめて、静かにドアを開ける。 さっきまであんなに騒がしかった自意識も、今は心地よい疲れの中に沈んで、どこか遠くへ行ってしまったみたいだ。

ほんの少しの切なさと、それを上回るくらいの「大丈夫」という感覚。

そんな手触りのある一日が、また静かに始まっていくんだ。

明日もまた、少しだけ早く起きてみようかね。

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