坂道走の上の雲。

行政書士としてのお仕事で伊勢原に行く用事があった。

伊勢原まで来たなら、ついでに坂トレでもやるかと伊勢原市総合運動公園で、アップヒル走を10本、ダウンヒル走を5本やってきた。

ゼーゼーと、自分の呼吸の音だけが耳の奥で、いや、頭の真ん中でガンガン鳴っていて。あんなに高いところにあったはずの空が、一歩、また一歩と足を動かすうちに、少しずつ近づいてくる。

坂道を走るって、なんというか、自分との「ごまかしのきかない対話」みたいなところがあるんです。

ぐぐっと身体を傾けて上り坂を駆け上がるとき、お尻の筋肉や裏ももが、じりじりと熱くなって悲鳴をあげます。「もう、やめようよ」って。 でも、この「きついなぁ」という時間が、のちのち、ものすごいごほうびになるのを知っているから、やめられない。

ここで蓄えたパワーが、トラックでの3000メートルレースの終盤、あと1周、あと200メートルっていう一番苦しいところで、「もうひと踏ん張り」の爆発的な推進力に化けてくれると信じているから。

そして、下り坂。 これはもう、まるで自分の足じゃないみたいに、ものすごい速さでピッチが刻まれます。 「え、足ってこんなに速く動けるんだ」という感覚を、脳がちゃんと記憶してくれるんです。それが、ラストスパートの、あの「一瞬のキレ」を生み出してくれる。

3000メートルという距離は、ちょっと不思議な距離。

一番キツいのは、やっぱり2000メートルを過ぎたあたり。体の中から酸素が消えて、足が鉛のように重くなる、あの「地獄の1キロ」です。

でもね。坂道を何度も往復して、体に乳酸をたっぷり溜め込みながらも粘り倒した経験があると、不思議と心が折れなくなるんです。 「あの坂道の苦しさに比べたら、まだいける」って、じぶんの身体を信じてあげられる。

そうやって坂道で、心臓と肺の限界値をちょっとだけ押し上げておくと、いざ平地に戻ったときに、驚くような変化が起きます。

いつもなら「速いな、苦しいな」と感じていたレースペースが、なんだか、すこし、スピード感に余裕があるように思える。

「あ、景色がちゃんと見えるぞ」という精神的な余裕は、レースにおいて、何よりも強い味方になってくれます。

さて、坂道でせっかく素晴らしい土台ができたのだから。 次はその手に入れたパワーを、平地での「実戦のスピード」へと、そっと移し替えてあげる番です。

たとえば、400メートルを5本から7本、目標のレースペースより少しだけ速く走ってみる。 あるいは、1000メートルを3本、目標のレースペースそのままで走ってみる。

坂道で手に入れた「お土産」を、平らなトラックで広げてみたとき。 驚くほど足が軽くて、前へ前へと引っ張られるような、風を追い越していくような感覚に、きっと出会えるはずです。

お住まいの近くにちょっとした坂があるなら試してみても損はないはず・・・

怪我や転倒だけにはご注意を。


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