
秋分の日がすぎて、昼と夜の長さがちょうど半分こになった。 風のなかに少しだけ冷たさが混じって、道端には彼岸花がぽつりと咲いている。 走るひとにとっては、いちばん気持ちのいい季節がやってきたんだと思。
でもね、調子よく走っているときに、膝の外側が「ツン」と痛み出すことがある。 いわゆる「ランナー膝(腸脛靭帯炎)」ってやつです。 あれ、本当につらいですよね。一歩踏み出すたびに膝に針が刺さるみたいで、急に世界が暗くなったような気持ちになる。
昔はね、「靭帯が骨とすれて炎症を起こすんだ」なんて言われていたんだけど、最近の考え方はちょっと違います。
すれているんじゃなくて、膝の外側にある「ちいさな脂肪のクッション」が、上からギュッと押しつぶされているんだよね。 特に膝が30度くらい曲がった瞬間が、いちばんクッションがつぶされやすい。 走るたびに、そのクッションを何千回もドシンドシンと踏みつけてしまう。それが痛みの正体なんだと。
だからね、膝が痛くなったときに絶対にやっちゃいけないことがあります。
それは、痛いところを硬いローラーでゴロゴロ押しつぶしたり、痛みをがまんして強引に引っ張るストレッチをすること。 腫れているクッションの上から、自分で体重をかけて追い打ちをかけるようなものだから、それは一度お休みしましょう。
痛いときの対処法は、まずは潔く休むこと。
「休んだら走力が落ちちゃう」って焦る気持ちは痛いほどよくわかるけれど、壊れたクッションの炎症を静めるのが先決です。
少し落ち着いて走れそうになったら、ゆっくりダラダラ走るよりも、むしろ「足の回転(ピッチ)」をちょっと速くしてあげるのがコツだったりします。 ゆっくり走ると膝が深く曲がる時間が長くなって、クッションがつぶされ続けちゃうから。すっと速い回転で危険な角度を通り抜けちゃうほうが、膝には優しかったりするんです。
そして、何より大事なのは「ランナー膝にならない走り方」を体に覚えてもらうこと。
秘訣はひとつ。「膝で走らないこと」です。
膝が痛くなるひとは、着地のときに膝をクッションにして着地していたり、蹴り出すときに膝が曲がったまま足首で地面をこねるように蹴っていることが多い。 膝じゃなくて、体の中でいちばん大きなお肉がついている「お尻」を使って走るんです。
お尻(大殿筋や中殿筋)にキュッと力が入ると、膝は勝手にぐらつかなくなります。 おっとっと、と体が前に自然に倒れるような傾きをつくって、自分の体の真下に足を置く。 膝をねじらず、お尻の力でまっすぐ前へ進む。それだけで膝への負担はがらりと変わるんですよね。
私のランレッスンでは、膝をクッションにしないでお尻を使う動きづくりをお伝えしています。
無数にある動き作りの中でも厳選して無理なく続けられる3種類だけ。

最後に、予防のためのストレッチをいくつか。
ひとつめは、お尻のほぐし。 四つんばいになって、片足を前に出してお尻を床に近づける。そのまま胸をいろんな方向に少しずつ倒してみて、お尻の奥が気持ちよく伸びる場所を探す。お尻が柔らかくなると、膝を守る壁になってくれます。

ふたつめは、ポケットのあたりのストレッチ。 ズボンのポケットのあたり(大腿筋膜張筋)は、膝の外側とつながっていて固くなりやすい。足をクロスして立って、骨盤を横にぐーっと押し出すように伸ばしてあげると、横のラインが心地よくほぐれます。

みっつめは、膝のお皿のセルフケア。 足を伸ばして座って、力を抜いた状態で、膝のお皿(膝蓋骨)を指で上下左右に優しくゆらゆら動かしてあげる。これだけでも膝のまわりの強張りが取れて、動きが滑らかになるんです。

走るって、身体との対話なんだと思う。 痛む膝は、「ちょっと走り方のバランスが崩れているよ」と教えてくれる小さなシグナル。
膝のメッセージに耳を傾けて、お尻を少し意識してあげて、明日もまた気持ちよく風を切って走れますように。








